となみのきっぷブログ

日本中の様々なきっぷを紹介します

マルス券による私鉄連絡乗車券 〜金額入力操作〜

 ご覧いただきありがとうございます。この度はきっぷ趣味の中でも興味深いマルス券による連絡乗車券について、紹介をいたします。

 

 日本の多くの鉄道会社では、乗換え駅を設け隣接する二つの会社でお互いに契約を取り交わし、他社同士を一枚のきっぷで発売する、いわゆる連絡運輸を実施しているケースが全国に多々あります。

 例えば東京駅から、品川を乗換え駅として京急線羽田空港第一・第二ターミナル駅までを一枚のきっぷで乗車することが可能です。このように一枚で会社が二つ以上絡んでいるきっぷを連絡乗車券と呼び、その契約を連絡運輸と総称しています。

 

 現在は交通系ICカードの普及により、紙のきっぷが活用されることは少なくなりました。基本的に鉄道会社は便利なICカードの利用を勧めています。ただし、二社間で連絡運輸を結んでいる以上、紙のきっぷによる発売も行わなければいけません。
 連絡乗車券を紙のきっぷで発券する場合、一般的には券売機による発売になります。券売機の場合、下のような「エド券」が発券されます。

名鉄線 三好ケ丘から赤池接続  名古屋市交通局への連絡乗車券

これは名鉄から地下鉄への連絡乗車券のためJR線は絡んでいませんが、JR線の券売機でも同じようなものが発券されます。今回の記事はマルス券に関するものですので、エド券については一度割愛します。

 

さて、紙のきっぷによる連絡乗車券ですが、当然みどりの窓口でも購入することが出来ます。みどりの窓口に置かれる発券端末は「マルス」と呼ばれるもので、先ほど紹介した券売機で発券されるエド券とは大きく異なります。まずはマルス端末で発券された連絡乗車券を紹介します。

南武線 久地から登戸接続 小田急読売ランド前への連絡乗車券

経由欄には南武・登戸と表記されており、小田急線へ連絡するきっぷであることが示されています。

総武線 本八幡から西船橋接続 東京地下鉄線 妙典への連絡乗車券

①とはきっぷの大きさが変わっています。

南武線 武蔵中原から武蔵小杉接続 東急線 田園調布までの連絡乗車券

経由欄に手書きで「武蔵小杉」と表記されています。

 

 これら①~③は全てマルスで発券した連絡乗車券です。ではこれらのきっぷについて、違いを説明いたします。

①運賃収容

このきっぷはJRの自動改札に対応した85mm券です。

マルス端末に事前にその区間の運賃が収容されているため、駅名を入力することでJR線内完結の乗車券と同じように、簡単に発券できます。

①に対し、以下の二つは運賃の登録がありません。係員の手で運賃を入力する必要があります。

②金額入力 自-社区間

このきっぷは自動改札非対応の120mm券です。①のように運賃の登録がないため、手入力で運賃を計算しています。金額入力と呼ばれる操作で、中でも「自-社区間」というモードです。このモードは、JR線部分は機械による計算、社線(私鉄線)部分は手入力しています。

写真の例では、本八幡西船橋 170円を自動計算、西船橋~妙典 180円を手入力しているという訳です。

③金額入力 基準額

②と同じく120mm券です。しかし、経由欄が手書きとなっています。これは金額入力の中でも「基準額」というモードを使っています。このモードは割引が適用される範囲で用いられるもので、写真の例では乗継割引が適用される区間で発券しています。「基準額」を使用すると自動的に割引分の運賃が引かれます。

写真の例では通しの料金290円から、自動的に両会社で5円ずつ割引がなされ、280円のきっぷが発券されます。

また、この「基準額」では経由を機械で入力出来ず、手書きするよう指示が出ます。写真の例のように手書きで経由(接続駅である「武蔵小杉」)が書かれます。

 

 

 以上のように、連絡乗車券でも様々な発券方法があります。金額入力にはさらに「収受額」というモードもあり、これは完全に収受する金額だけを入力するものです。これはマルス端末においての最終奥義のようなものですので、なかなか使われることはなさそうです。

 さて、ここまで紹介してきた連絡乗車券ですが、2023年3月のダイヤ改正JR東日本と各会社間で大幅な連絡運輸範囲縮小が行われました。そのため、多くの連絡運輸が券売機で対応できる程度になっています。もし連絡乗車券を依頼するのであれば、事前に連絡運輸範囲の確認が必須でしょう。

 連絡運輸範囲を確認する場合、駅に置かれている「旅客連絡運輸規則別表・旅客連絡運輸取扱基準規程別表」(通称「赤表紙」)を参照する必要があります。連絡乗車券の発券は赤表紙を参照→旅客からの依頼が連絡運輸範囲内→マルス操作(金額入力操作などの高難易度な操作を必要とする場合がある)という流れで行うため、駅窓口のマルス操作スキルに依存します。特に「基準額」操作を必要とする場合、発券できる駅はかなり限られるでしょう。もし「基準額」で発券するところを「自ー社区間」で出してしまうと誤発になります。誤発させてしまう可能性を感じたら、即座に申込を棄却しましょう...。

 

 余談です。私が使用した連絡乗車券の中でお気に入りはこれです。

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小田急線との連絡運輸範囲はかなり縮小されましたが、厚木接続は広く残っています。小田急線内の着駅をJR乗換え駅にすると、券面に「(小田急線)」が入るので、連絡乗車券らしさがでてとても好ましいです。

 今回はここまでです。だらだらとした文章になってしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございました。